かぶれ・金属アレルギーとは
私たちは日々の生活の中で常に様々な物に接していて、これらの物により皮膚の障害が起こることが少なくありません。
私たちは日々の生活の中で常に様々な物に接していて、これらの物により皮膚の障害が起こることが少なくありません。
かぶれ(接触性皮膚炎)とは、原因となった物質(アレルゲン)が触れた部位に強い反応を起こすことや、繰り返し触れることが引き金となって、その物質の触れていない部位にも全身に症状の広がる状態のことをいいます。
原因として古くはウルシやギンナン、サクラソウなどの植物によるもの、最近では消毒薬や市販の軟膏、湿布、シャンプー、ゴム手袋、リップクリーム、髪染め、マンゴーなど、意外な物として、目薬、トイレットペーパーの香料、鍵の金属など、他にもたくさんあります。
金属アレルギーとは、金属そのものや金属を含む物に触れることによって、皮膚に炎症を起こしてしまうことです。金属を含む物は意外な物もあるので注意が必要です。
例えば、革製品や塗料やファンデーションなどにも含まれることがあるので金属が原因だと気付かない方もいるかもしれません。金属アレルギーで忘れてはいけないことに、歯科治療で使われる詰め物などがあります。多数の金属を使うこともあり、口の中の粘膜の異常や、手のひら、足の裏に皮膚の症状が出ることがあります。なぜ手のひらや足の裏に金属アレルギーの症状が出るかというと、体に吸収された金属は汗と一緒に出ることが知られていて、汗をよくかく手のひら・足の裏に汗として出る時に、汗の出口の所で炎症を起こしてしまうのです。
同じ理由で食べ物に含まれる金属による金属アレルギーが手足に出ることもあります。金属を含む食べ物として、以下のような物にニッケルやコバルト・クロムが含まれます。
◎ニッケル
全ての豆類、全ての木の実、玄米、蕎麦、オートミール、麦茶、ほうれんそう、レタス、かぼちゃ、キャベツ、マッシュルーム、全ての海草、牡蠣、鮭、ニシン、全ての香辛料、紅茶、ココア、ワイン、チョコレート、タバコ、漢方
◎コバルト
全ての豆類、全ての木の実、キャベツ、肝臓(肉)、ホタテ貝、全ての香辛料、紅茶、ココア、ビール、コーヒー、チョコレート
◎クロム
馬鈴薯、玉ねぎ、マッシュルーム、全ての香辛料、紅茶、ココア、チョコレート
皆さん意識しないで生活していますが意外な物でかぶれることは少なくありません。
意外に思われるかもしれませんが、かぶれや金属アレルギーは使い始めてすぐ起こる場合もありますが、使い始めてから1,2週間経ってから起こることも少なくありません。
スギ花粉症をイメージしていただければわかりますが、毎年スギの花粉は飛んでいても「今年から花粉症になっちゃった」ということがありますよね。それと同じようにずっと使っている物であっても、ある時から合わなくなるということがあります。患者さんによっては2年前から使っているシャンプーが2週間前から合わなくなってきた、ということがないわけではありません。そのように考えるとかぶれや金属アレルギーが起こった場合には、いろいろな物が原因になったりする可能性がありますし、それは意外な物かもしれません。
お話だけで原因をつきとめられない場合はパッチテストをしていくことになります。
診察ではどこの場所にどんな症状があるのかを詳しく確認していきます。症状がある場所を見せられるようにして来て下さい。ご自身で思いあたる原因がある時には教えていただくと診察がスムーズに進みます。
パッチテストとはアレルギー性接触性皮膚炎の原因となっているアレルゲンを見つけるための検査です。ご自分にとってのアレルゲンを調べ、日常生活からそのアレルゲンを避けることで、皮膚炎を予防することができます。
パッチテストは皮膚を使ってアレルギー反応の原因を調べることができる比較的安全で確実な方法です。
検査方法は、まずアレルゲンを含むテスト品を背中や腕に貼り、テープで固定します。2日後にテープをはがして約30分後とその翌日(3日後)に皮膚の反応を確認します。7日後に最後の判定をおこない、結果の説明をします。
パッチテストには
①原因と疑われる物を持参していただく
②ジャパニーズスタンダードアレルゲン(日本人がかぶれやすい物の試薬のセット)22種類で行う
③金属アレルギーのセット18種類で行う
の3パターンがあります。
原因になるものをみつけて避けていく、触れないようにしていくことが1番の治療になります。肌が荒れている場所にはそれぞれの場所に応じた正しいステロイドの塗り薬や、アレルギーを抑えるための飲み薬が出ることがあります。肌荒れの程度によっては表面を守って潤いを与えてあげるための保湿剤が出ることもあります。金属アレルギーについては金属が含まれる食べ物を避けることも必要となるかもしれません。
保険診療において一般的な3割負担の場合で算定しています。1割負担の方は記載額の1/3、2割負担の方は2/3としてください。受診の際には初診料(850円)や再診料(220円)が必要となり、場合に必要となる項目として、外来管理加算(160円)や処方箋料(200円)等があります。また処方薬がある場合には院外薬局で調剤料等(400~600円程度)がかかります。
その他に必要に応じて以下の項目がかかります。
<治療に使われる代表的な外用ステロイド薬>
・マイザー軟膏1本5g 31円
<治療に使われる代表的な抗アレルギー剤>
・タリオン7日分 216円
<原因として疑われる物を患者さんが持参される場合(例えばシャンプーや日焼け止め・毛染め液・工業用オイル・目薬・消毒液など)>
・1箇所 50円
・22箇所以上の場合 同一で1,050円(ただし1回でおこなうことのできる数に限りがあります)
<日本人がかぶれやすい物の試薬>
・ジャパニーズスタンダードアレルゲンのパネル(22種類) 検査料と合わせて5,810円
<金属アレルギーのセット>
・18種類の場合 1,000円程度
かぶれや金属アレルギーは、繰り返しになりますが、何より大切なのは原因となることを見つけて、それをいかに避けるかということです。かぶれなどの症状が疑われる場合は何が悪さになっているかを意識して、まず原因をはっきりさせなければいけません。ただ、思い当たる原因が何もないことも多くあります。その場合は原因を推測していくのですが、どんな事をすると症状が強く出てくるのかということがヒントになります。例えばお仕事がお休みの日は皮膚の調子が良いのであれば、原因はお仕事中に触れている何かということになりますし、お休みでもお休みでなくても皮膚の症状に特に違いがないのであれば、家庭で日々使っている物が原因かもしれません。
症状がどんな時に出てくるか以外に、どのような場所に出てくるのかということも原因を探るうえで大切になります。もし耳の周りや耳の上側、目の周りや首辺りに症状があると、それはシャンプーなどのかぶれでよくみられる症状になります。手の甲や手首などに症状がある場合はゴムの手袋で症状が出やすい部位になります。利き手の親指の内側や人差し指・中指の内側に皮膚の症状が強ければ食器洗いの洗剤が原因かもしれません。そのように症状がどんな時にどこの場所に出るのかを意識していただくことがかぶれの原因を考えるうえで必要になります。
かぶれは症状がある場所をこすったり、指でいじったりすると悪くなります。また温めても悪くなるので、症状が強い時にはお風呂に長く入ったりしないでお酒は控えめにして下さい。
私たちの身の周りには除菌グッズや除菌をうたった製品があふれていますが、これがかぶれの原因となることも少なくありません。現在は必要以上に清潔志向なところがあるので、除菌が必要ない場合であっても除菌製品が使われることも多くあります。例えば手荒れの原因にハンドソープや食器用洗剤が原因となっていることもありますが、その場合は「除菌」と書いていない物をおすすめすることがあります。除菌ジェルや除菌シートなどもかぶれの原因となることもあるので注意が必要です。
一度かぶれてしまうとその原因となった物に慣れていって症状が出なくなるということはとても少ないです。使い続けるとだんだん症状は悪くなって、ふれていない所に広がってしまうこともあります。かぶれが疑われる場合にはそのまま使い続けず早めに受診することが大切です。症状が軽ければ治るまでの期間も少なく済みます。
かぶれている時や、かぶれが良くなって少し茶色く色素沈着として残っている場合に紫外線にあたると、より茶色く跡に残りやすくなってしまいます。皮膚の症状がある場所や治った後のシミもできる限り紫外線をあてないようにするか、ある程度薄くなるまで日焼け止めなどを使うのがおすすめです。
手や顔には特にかぶれがおこりやすいです。手は様々な物に触れるので、その中で合わないものに触れていてかぶれてしまうことがあります。顔も洗顔やシャンプーの刺激、化粧水やお化粧など、様々な物に触れる場所です。また顔は皮膚が薄く刺激に弱い場所なので、かぶれがおこりやすいです。シャンプーのかぶれであっても頭の地肌は強いのでかぶれづらく、洗い流す際に流れ落ちる顔でかぶれることもよくあります。手や顔でなかなか治らない赤みやガサガサがある場合には何か原因になっている物があるかぶれかもしれません。手や顔に治りの悪い症状がある場合にはぜひ受診してみて下さい。かぶれが原因の場合には原因になる物が取り除かれると、短期間でびっくりするくらい良くなるかもしれません。
まず症状を確認させていただいて、疑わしい物の目星を付けてから行う必要があります。疑わしい物がいくつか決まったら、それを持って来てもらわないといけません。またパッチテストをする場合2日後に剥がしに来ていただく必要もありますので、2日後が休診日だとできません。一般的には初診したその日には行わず、後日予定を組んでやっていきます。ただ、金属アレルギーに関しては当院にある試薬で行い、持って来てもらう物もありませんので、受診していただく日によってはその日に出来るかもしれません。
パッチテストは48時間後(2日後)に剥がします。剥がす日には受診が必要です。また貼ってから72時間後(3日後)と1週間後(7日後)にも判定をおこないます。3日後は来院が難しい場合、ご自宅でスマホなどで貼った場所の写真を撮っていただくことで代用することもできます。1週間後の判定は前後1日程度ずれての受診でもかまいません。
背中などに試薬を貼っている2日間でもフィルム剤を上から貼りますので、シャワーを浴びることは可能です。ただ貼っている2日間は湯船には入らないで下さい。試薬を剥がした後はシャワーも湯船もかまわないのですが、貼った場所のテープが消えてしまうと判定ができなくなるので、マークを洗い落とさないようにするか、テープなどで目印を作って、それを剥がさないようにして下さい。
試薬を貼っている2日間にひどく汗をかいてしまうと試薬やフィルムが剥がれてしまって正しい判定ができなくなってしまいます。貼っている2日間はできる限り汗をかかないように注意して下さい。貼っている間の運動なども控えて下さい。お仕事などで激しく汗をかく場合には、パッチテストをする季節を考えなくてはいけないかもしれません。また試薬で強い反応が起こると、貼って1日後でも激しく赤くなったり、痛みが出ることもあります。その場合はすぐに試薬を剥がす必要があるかもしれません。激しい赤みや痛み、水疱などができている場合には早めにご連絡下さい。
以下の18種類になります。
①酸化アルミニウム
②酸化金酸
③塩化コバルト
④塩化第二水銀
⑤塩化第二スズ
⑥塩化第二鉄
⑦塩化白金酸
⑧塩化パラジウム
⑨三塩化インジウム
⑩重クロム酸カリウム
⑪四塩化イリジウム
⑫硫酸クロム
⑬硫酸銅
⑭硫酸ニッケル
⑮塩化亜鉛
⑯塩化マンガン
⑰臭化銀
⑱白色ワセリン
チタンについては試薬がありません。チタンのパッチテストをご希望される場合は歯科などでご相談のうえ、チタンのプレートをご持参下さい。